こんにちは。松山市の司法書士・行政書士 菊池俊幸です。

先日、相続のご相談を受けていると、「父が相続放棄を検討しているのですが、私に相続権が移るんでしょうか?」という質問を受けましたのでご説明します。ニュースやインターネットでも相続放棄という言葉をよく目にするようになりましたが、実際の仕組みは意外と知られていません。結論から言えば、相続放棄をした人の子どもに相続権は移りません。

相続放棄とは、相続人が「自分は相続しません」と家庭裁判所に申述する正式な手続きのことをいいます。この申述が受理されると、法的には「はじめから相続人でなかった」とみなされます。つまり、相続放棄をした人は、相続開始時点で存在しなかったものとして扱われるため、当然その子どもに相続権が移ることもありません。

では、相続放棄した人の子どもに相続が移らない理由は何なのか。それは、代襲相続(だいしゅうそうぞく)の仕組みに関係しています。通常、ある相続人が亡くなっている場合、その子どもが亡くなった相続人の立場を引き継いで相続する制度を代襲相続といいます。例えば、お父さんが先に亡くなっている場合、その子どもが代わりに相続する、といったケースです。

しかし、この代襲相続が適用されるのは、相続人が死亡している場合と、相続欠格・排除といった特殊な場合に限られています。相続放棄はこの代襲相続の理由には含まれていません。 つまり、相続放棄をした人は「はじめから相続人でなかった」扱いになるだけなので、その人の子どもに相続権が移ることにはならないのです。「父が相続放棄子が代わりに相続」という流れは発生しないということになります。

相続放棄は「申述期間が3か月」「家庭裁判所での手続きが必要」など、期限とルールの厳しい手続きです。判断を誤ると後の生活に影響を及ぼすこともありますので、相続放棄を検討されている場合は、期限を徒過しないよう速やかに手続きを行うようにしてください。

 

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