遺言書の書き方と遺言の手続

最近は、高齢化社会の進展に伴い、相続や遺言についての関心が高く、また、週刊誌等で相続や遺言について記事になることが多いせいか、遺言についてのご相談をよくいただきます。

そのため、遺言書の書き方と遺言の手続について、記載しましたので、ご参考にしてください。

1 遺言書の種類 

遺言書の主な種類は、次の3種類になります。

 

種 類 内 容
自筆証書遺言    遺言を残す方が自筆で作成する遺言のことです。
公正証書遺言 公証役場(※)で公証人に作成してもらう遺言のことです。
秘密証書遺言 遺言者が作成し封印した遺言書を公証人役場に持参し、公証人に認証してもらう遺言のことです。

秘密証書遺言はほとんど作成されてないため、一般的には、「自筆証書遺言」又は「公正証書遺言」の2種類のどちらかの方法で作成されています。

※ 公証役場は、松山市では、伊予鉄市内電車大街道駅からロープウェイ街の方に3分程度歩いたところにあります。

2 自筆証書遺言

1 作成方法

遺言者が、遺言書の全文日付及び氏名自書して、これに押印して作成します。

遺言書の財産目録の部分については、パソコン等で作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産登記事項証明書のコピーを添付したりして遺言を作成することが可能です。

なお、パソコン等で作成した財産目録については、必ず印刷した全ページに署名・押印してください。

自筆証書遺言は、記載ミスがあると遺言としての効力がなくなる恐れがありますので、十分注意してください。

 

2 遺言書の訂正方法

遺言書に記載誤りがある場合は、極力書き直すようにしてください。やむを得ず訂正する場合は、下記及び遺言書作成例を参考に訂正してください。正しく訂正しなかった場合は、訂正しなかったものと見なされますので、十分注意してください。

 (訂正する場合)

① 訂正箇所に二重線をひきます。

② 正しい文言を、その近くに書きます。

③ 訂正印を二重線の近くに押します。

④ 余白に、訂正内容(加えたり削除した文字の数)を書き、署名します。

  

 (加筆する場合)

① 加筆箇所に、吹き出しで加入する内容を書き入れ、加筆した箇所の近くに訂正印を押します。

② 余白に訂正内容(加えた文字数)を書き、署名します。

 
<遺言書作成例>

 

<自筆証書遺言を作成する場合の注意点>

遺言書の様式に規定はないため、メモ用紙の切れ端や広告紙の裏に記載しても有効です。ただし、後日のトラブル防止のため、なるべくA4又はB5のきれいな用紙に記載するようにしてください。

押印箇所に規定はないため、どこに押しても有効です。一般的には、名前の横に押印します。

遺言書が複数ページになる場合でも、各ページの綴り目に契印がなくても有効です。ただし、後日のトラブル防止のため、契印を押印するようにしてください。

(※ 法務局への遺言書保管申請をする場合には、個別に作成上のルールがありますので、そのルールに従ってください)

 

<遺言が無効になる主な事例>

・日付の記載漏れ

 日付を記載していても、「〇月吉日」という記載は無効となります。

・押印漏れ

 印鑑は実印でなくてもよく、認印や拇印でもかまいません。

・自書でない箇所がある

 パソコンで記載した財産目録の余白に遺言内容を記載した遺言書は無効です。

・遺言書の代筆

 手が不自由で夫が妻の介助を受けながら筆記した遺言書は無効です。

・表現が曖昧な遺言

 「自宅を相続させる」等の記載は不動産を特定できないため、法務局で登記できません。不動産は登記事項証明書のとおりに記載してください。

・2人以上が共同で書いた遺言

 夫婦2人で1枚の遺言書に共同で署名押印して作成した遺言書は無効です。必ず一人ずつ作成してください。

 

3 裁判所の検認手続

被相続人のご自宅から遺言書が見つかった場合は、まず家庭裁判所に検認の申し立てをしてください。

検認手続の済んでいない遺言書では、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約等をすることができません。

(手続きの流れ)

① 遺言保管者又は遺言を発見した相続人が、家庭裁判所に検認の申立てを行います(必要書類:検認申立書、遺言者の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍謄本)、相続人全員の戸籍謄本等)

② 検認の申立て後、家庭裁判所から検認日の通知が相続人に対してあります。

③ 検認日当日に相続人立ち合いのもと、遺言書の開封、内容の確認が行われます。なお、相続人全員が出席していなくても検認は行われます。

④ 検認後、遺言に検認済証明書が合綴されて、交付されます。

 

4 遺言書の保管制度

遺言者は、自筆証書遺言書の保管を法務局に申請することができます。

(遺言書の保管制度の特徴)

・管轄は、遺言者の住所地、本籍地、所有する不動産の所在地

・法務局に遺言者自ら出頭する必要があります。

・この制度を利用した遺言書については裁判所の検認不要です。

・自筆証書遺言を作成した場合でも、この制度を利用するかどうかは任意。

 

自筆証書遺言は、紛失・偽造のリスクがあるため、作成後は、なるべく法務局に遺言書の保管の申請をしておくようにしてください。

遺言書の保管申請をしない場合は、封筒を準備して、表に「遺言書」と記載し、作成した遺言書を入れて封をして、金庫等で厳重に保管するようにしてください。

3 公正証書遺言

1 手続方法

① 遺言者(※司法書士に依頼された場合は、司法書士)が遺言内容の原案を作成します。

② 公証役場へ行き、遺言内容の原案について公証人と内容確認・検討します。

③ 日程調整した日に、遺言者、証人2名で公証役場に行きます。

④ 遺言の内容を確認し、間違いなければ、公証人、遺言者、証人2名が署名・押印します。

⑤ 公正証書遺言の正本及び謄本が遺言者に渡されます。

 

2 公正証書遺言のメリット・デメリット

(メリット)

・公証人が作成するので遺言が無効にならない。

・公証役場で保管されるため、遺言の紛失・偽造を防止できる。

・字が書けなくても遺言できる。

・検認が不要のため、すぐに相続手続を開始できる。

(デメリット)

・費用がかかる。

・証人が2名必要(※)

※ 推定相続人(遺言者が亡くなったら相続人になれる立場にある人)、受遺者(遺言により財産を貰う人)及びその配偶者並びに直系血族は証人になれません。なお、当事務所に依頼された場合は、当事務所司法書士及び司法書士補助者が証人になります。

 

公正証書遺言は、公証人が作成するので、遺言が無効になってしまう心配はありません。また、公証役場で保管されるため、遺言の紛失・偽造も防止できます。

遺言を検討される場合は、確実に遺言を残すために、公正証書遺言にされるのが一番良いと思います。

 

4 遺言書作成の際の留意事項

相続による争い(争族)を防ぐためには、遺言を作成しておくのが最も効果的な方法だと思いますが、遺言書を残していても、遺言に納得いかない相続人から争いになる場合があります。争族を防ぐためにも次の点に注意して遺言書を作成するようにしてください。

 

・ 遺留分について検討する。

遺留分とは、最低限取得できる相続財産の割合のことで、子であれば、自分の相続分の2分の1になります。遺言による相続分が遺留分に満たない場合は、遺留分侵害額請求をすれば、遺留分に相当する金額を他の相続人から取り戻すことができます。遺留分に相当する金額がいくらになるか確認しておき、財産を渡したくない子供がいる場合でも遺留分だけは渡すよう遺言書を作成するか、または、遺留分を考慮せず遺言書を作成し、遺留分侵害額請求がされた場合に対応することとするか等、遺留分について事前に検討しておくようにしてください。

 

・ 予備的遺言について検討する。

遺言書で指定していた相続人が遺言者より先に死亡した場合、その遺言事項は効力がなくなってしまい、相続人全員による遺産分割協議により誰が相続するかを決めることになります。遺言書で指定していた相続人が先に死亡した場合も想定して、なるべく次の相続人についても遺言書の中で指定しておくようにしてください。

 

・ 遺言書の中に付言事項を記入する。

どのような形で財産を分けても、全員が100%納得することはありません。そのため、なぜ遺言書に書いた相続割合で相続させるように考えたのかという理由を、付言事項として遺言書の中に書くようにするとよいと思います。

 

・ 遺言書の中で遺言執行者を指定する。

遺言執行者は相続人の代表として、遺言の内容を実現するため様々な手続を行う権限を有している人です。遺言執行者は未成年者や破産者でなければ誰でもかまいませんが、通常は、相続人の一人を遺言執行者にすることが多いです。

相続手続の際に、遺言執行者の指定がないと相続人全員の署名・押印及び印鑑証明書の提出を求められる場合がありますので、相続手続を円滑に進めるため、遺言執行者を指定しておくのが良いと思います。

5 遺言書がない場合の相続手続

相続人が1名の場合はその方が全財産を相続しますが、相続人が複数名いる場合は、相続人全員による協議(遺産分割協議)で、遺産を分配します。

相続人全員による協議が整わない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停・審判を申し立てて遺産を分配することになります。

遺産について相続人間で揉める可能性がある場合は、遺言書を作成することをお勧めします。

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