〒790-0923 愛媛県松山市北久米町1103番地6(駐車場:あり)
法務局で不動産に関する情報を調べる際に参考になる情報を記載しています。
専門的な内容も少し入れましたので、一般の人にはあまり馴染みがなく分かりにくいところがあるかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。
1 不動産登記事項証明書の構成
不動産登記事項証明書は、表題部、権利部(甲区)、権利部(乙区)の3つの部分で構成されています。
① 表題部・・・この欄の登記は、土地家屋調査士が行います。
② 権利部(甲区)・・・この欄の登記は、司法書士が行います。
③ 権利部(乙区)・・・この欄の登記は、司法書士が行います。
④ この記載は、紙の登記簿から、コンピュータ様式へ変更された旨の記載です。甲区1番に「順位4番の登記を移記」と記載されているので、紙の閉鎖登記簿謄本を取得すれば、過去の所有者(順位1,2,3番の3人)を調べることができます。
2 表題部
表題部は、不動産の物的状況、不動産を特定するための情報が記載されています。なお、不動産に関する資料のうち、地積測量図、建物図面については、すべての不動産にあるわけではありません。あるかどうかについて表題部を見れば、ある程度判断できます。判断の仕方については、後で説明します。
3 権利部(甲区)
権利部(甲区)には、所有権に関する事項が登記されます。なお、売買等により登記をしようとする際に、権利部(甲区)に次の登記があると登記をしても所有権を失う可能性があるので注意してください。
・所有権移転仮登記
・差押登記
・仮差押登記
・仮処分登記
(1)所有権移転仮登記
仮登記は、後でする本登記のためにあらかじめ登記上の順位を確保しておくための登記です。せっかく所有権移転登記をしても、前に仮登記がある場合は、本登記がされると所有権を失うことになります。
※ 仮登記は、本登記をするための余白があるのが特徴です。
(2)差押登記
差押登記がある不動産について所有権移転登記をした場合、その不動産が競売により売却されると、せっかく所有権移転登記をしたのに抹消され、競売による買受人に所有権が移転します。
(3)仮差押登記
仮差押は将来の金銭債権の強制執行をするための予備的手続ですが、こちらについても仮差押の後に所有権移転登記をした場合、競売により売却されると、せっかく所有権移転登記をしたのに抹消され、競売による買受人に所有権が移転します。
(4)仮処分登記
仮処分の種類はいろいろありますが、不動産に対する仮処分は、相手が不動産を売ってしまうことを禁止する仮処分が大部分です。仮処分をした債権者に所有権移転登記をするよう命ずる勝訴判決が確定した場合、仮処分の後順位にある所有権移転登記は抹消されます。
4 権利部(乙区)
権利部(乙区)には、所有権に関する登記以外が記載されます。権利部(乙区)に登記されているのは、ほとんどが抵当権設定登記と根抵当権設定登記になります。
注意すべき点としては、抵当権、根抵当権が付いている不動産について、所有権移転登記をした場合、抵当権者、根抵当権者の申立てにより競売された場合、所有権移転登記は抹消されて所有権を失ってしまいます。
抵当権、根抵当権が付いていることはよくあることなので付いていても問題はありませんが、所有権移転登記をする場合、同時に、抵当権、根抵当権が抹消されることを確認しておく必要があります。
また、まれにですが、乙区に、明治、大正時代に設定された抵当権(一般に休眠担保権と言われます)が残っているときがあります。ほとんどの場合、抵当権者は個人なので、抵当権者の相続人を探してその方と共同で抹消する必要がありますが、実際には不可能です。この場合は、供託手続を利用して抹消するという特例方式により抹消します。
* 土地の登記事項証明書について
土地については、1筆の土地ごとに地番が振られています。公図上で地番が振られていない土地がありますが、その土地は、国又は地方公共団体の土地です。個人所有の土地についてはすべて地番が振られ、土地の登記が存在すると考えてよいです。
* 建物の登記事項証明書について
土地についてはほぼすべての土地について登記がありますが、建物については登記がない建物が多数存在します。なぜかと言うと、一般に、住宅ローン等のお金を借りて抵当権を付ける目的で登記をするため、自己資金で家を建てた場合は抵当権を付ける必要がなく、登記費用を節約するため登記をしない方がいるためです。
なお、法律上は建物を新築し取得した場合は、1カ月以内に登記をしなければならないと規定されています。
* 地番と住居表示について
登記事項証明書(登記簿謄本)を取得するには、地番で請求します。通常は、地番と住所が一致しているので住所で請求すれば取得できます。問題なのは、住居表示が実施されている地域で、地番と住所(住居表示番号)が違うため、住所で登記事項証明書を請求しても取得できません。
住居表示とは、建物に番号を付けて住所を分かりやすく表示する制度です。松山市の事業で、ある地域において住居表示が実施されると、その地域について街区を区切って、その中の住居に番号(住居番号)を付けていきます。
たとえば、「松山市西石井町5000番地1」という土地があった場合、住居表示が実施されると、住所は、「松山市西石井九丁目11番10号」等と変更されます。しかし、登記上は所在は変わりますが、地番は住居表示が実施されても変更されません。
一覧にすると次のとおりとなります。
登記上の所在・地番 | 所有者の住所 | |
住居表示実施前 | 西石井町5000番1 | 西石井町5000番地1 |
住居表示実施後 | 西石井九丁目5000番1 | 西石井九丁目11番10号 |
住居表示が実施されると、住所については、所在・地番の両方が変更されますが、不動産登記は、所在は変更されますが地番は変更されないという点に注意してください。
法務局で登記事項証明書を請求した場合に、住居表示なので発行できないといわれた場合は、次のような方法で地番を調べて下さい。
【地番の調べ方】
・登記済権利証(登記識別情報)で確認する。
・固定資産税納税通知書(毎年4月頃に自宅に郵送される)を見て確認する。
・松山市ホームページに掲載の住居表示新旧対照表で調べる。
・市役所で固定資産税課税台帳記載事項証明書を取得して確認する。
・登記情報提供サービスの地番検索サービスを利用して調べる。
・法務局に備え付けのブルーマップ(住宅地図に青字で地番が振られた地図)で調べる。
・近くの地番が分かれば、その公図を取得し、住宅地図と照らし合わせて、現地の地番を特定する。
1 地図(14条地図)と地図に準ずる図面(公図)の違い
法務局に備え付けている地図には、2種類あります。
一つは、国土調査や法務局地図作成作業等により現地を測量してその成果を図面にした地図で、不動産登記法第14条第1項に定める地図、一般に「14条地図」と呼ばれる図面です。
もう一つは、明治時代の地租改正の際に作成された地図がさまざまな変遷を経て法務局に備え付けられた図面又は土地改良事業等の各種事業で作成された図面で14条地図としての所定の要件を満たさなかったもので、この図面を地図に準ずる図面、一般に「公図」と呼ばれています。
※ 一般的には、14条地図、公図を含めて、法務局で発行している地図のすべてを、公図と呼ぶ場合があります。地図に準ずる図面(公図)は、14条地図が整備されていない地域について、整備されるまでの間、代わりに公開されている地図という位置付けになりますが、現実には、旧北条市を除く松山市の大部分の地図は地図に準ずる図面(公図)です。
2 地図(14条地図)の信頼性
14条地図は、現地を測量して作成した地図のため、方位、位置、形状とも正確な図面です。ただし、国土調査は、昭和の時代から実施されており、国土調査実施時期が古い地図だと、現在と比べて測量の技術が劣るため、現地と地図の筆界(境界)が若干ズレている場合があるので注意が必要です。
3 地図(14条地図)の見分け方
(1)登記事項証明書を見て確認する方法
14条地図のほとんどは、国土調査又は法務局の地図作成作業の実施により測量した地図を備え付けたものです(※一部例外があります)。国土調査又は法務局の地図作成作業で土地を測り直すとほとんどの土地について、面積が修正され次のような記載がされます。登記事項証明書の表題部を見て、次のような記載があれば14条地図の区域になります。
(2)図面を見て確認する方法
14条地図は、地図の分類欄に、「地図(法第14条第1項)」と記載されています。
1 地図に準ずる図面(公図)の信頼性
公図は、大部分は明治時代の地租改正の際に作られた図面に由来するため、方位、縮尺は正確性に欠け、形状も実際と相違する場合が多いです。ただし、経験上、隣接関係(東側に〇番、南側に〇番と〇番が隣接等)については、ある程度正確で現地と合っていることが多いです(場所にもよりますが・・・)。
公図は筆界(境界)を確認する資料としては使えませんが、隣接関係はある程度正確なため、現地を特定するための資料として使用するという使い方が良いと思います。
2 地図に準ずる図面(公図)の見分け方
(1)登記事項証明書を見て確認する方法
14条地図のほとんどは、国土調査又は法務局の地図作成作業により測量した地図なので、登記の表題部に「国土調査による成果」又は「地図作成」の記載がないものは、地図に準ずる図面(公図)の区域になります。
(※ただし、一部例外があります。)
(2)図面を見て確認する方法
地図に準ずる図面(公図)は、大部分は明治時代の地租を課税するための台帳である旧土地台帳に付属していた課税のための地図です。そのため、「旧土地台帳附属地図」という記載があるものが大部分です。
地図に準ずる図面は、地図の分類欄に、「地図に準ずる図面」と記載されています。
1 地積測量図
地積測量図は、一筆の土地について、地積の測量結果を明らかにする図面です。しかし、地積測量図はすべての土地について備え付けられている図面ではありません。土地の面積を書き換える登記(分筆、地積更正)を申請する際に、提出しなければならない図面ですので、分筆、地積更正をしたことのない土地については地積測量図がありません。
2 地積測量図の精度
昭和時代の地積測量図は、土地をいくつかの三角形に分けてそれぞれの面積の合計により面積を求める三斜法により作成されており、精度もあまりよくなく、また、現在のような座標法により作成されていないため、筆界(境界)の場所が現地のどこに位置するかを確認する資料としてはあまり役に立ちません。
現在は、世界測地系の座標法により測量図が作成され、測量技術も進歩し精度の高い図面が作成されており、筆界(境界)の位置も座標により表示されているため、筆界(境界)の場所が現地のどこに位置するかという土地の境界を確認する資料としても利用できます。
測量図は、作成された年代によって、精度や面積の信頼性が異なるので、注意が必要です。
3 地積測量図がある土地かどうかの判別方法
地積測量図は土地の面積を書き換える登記(分筆、地積更正)を申請する際に提出される図面ですが、分筆、地積更正登記がされていたとしても地積測量図があるとは限りません。地積測量図の提出が義務付けられたのは、松山本局であれば、昭和40年頃以降の分筆、地積更正登記からで、それ以前の分筆、地積更正登記については、地積測量図が提出されていません(地域によって時期が異なります)。
地積測量図があるかどうかの確認方法は、登記簿の表題部を見て昭和40年頃以降の日付で、分筆であれば「〇番から分筆」、地積更正であれば「③錯誤」等の記載があれば、測量図が存在します。
ただし、上記の記載があっても、同時に「国土調査による成果」の記載があれば、申請ではなく国土調査による測量がされたものなので、測量図はありません(※「地図作成」の記載がある場合は、法務局の地図作成作業によるものなので、法務局で職権で測量図を作成しており、この場合には測量図があります)。
【地積測量図がある土地】
※ 両方とも、昭和40年頃以降である、「平成3年10月10日」に分筆、地積更正登記がされているため、地積測量図があります。
【地積測量図がない土地】
※ 地積更正はされていますが、国土調査によるものなので地積測量図はありません。
1 建物図面・各階平面図
建物図面は、建物の形状と敷地のどの位置に建物が建っているかを示した図面で、各階平面図は、各階の形状と床面積、求積方法を記載した図面です。建物図面・各階平面図は、建物を新築して登記をするとき、又は、既にある建物の床面積の変更登記(増築等)をするときに提出しなければならない図面です。
なお、すべての建物について建物図面・各階平面図があるわけではありません。建物図面・各階平面図の添付が義務付けられたのは、松山本局であれば、昭和40年頃以降からで、それ以前に新築又は増築登記がされた建物については、建物図面・各階平面図がありません(測量図と同じ時期からです。地域によって時期が異なります)。
2 建物図面・各階平面図がある建物かどうかの判別方法
松山本局であれば、昭和40年頃以降の新築、増築登記の際に提出が義務付けられたので、登記簿の表題部を見て昭和40年頃以降の日付で、新築又は増築の登記がされた旨の記載があれば、建物図面・各階平面図が存在します。
【建物図面・各階平面図がある建物】
※ 新築については、昭和38年の新築ですが、登記されたのが昭和40年頃以降である「昭和49年4月10日」なので、建物図面・各階平面図があります。増築についても、登記されたのが平成7年なので、建物図面・各階平面図があります。
1 閉鎖登記簿
登記事項証明書の記載内容より以前の内容が知りたい場合は、閉鎖登記簿謄本を取得します。閉鎖登記簿とはどのようなものかと言いますと、①コンピュータ様式に移行する前の紙の登記簿、②合筆等により消滅した地番の土地登記簿、③滅失登記された建物登記簿、等が該当します。
2 旧土地台帳
旧土地台帳は、もともとは明治時代の地租課税のための台帳で税務署に保管されていましたが、現在は、法務局に保管されています。
登記事項証明書の記載内容より過去の内容を調べる場合には、閉鎖登記簿謄本を取得すれば調べることができますが、閉鎖登記簿謄本よりさらに以前の内容を調べる場合には、旧土地台帳の写しを取得すれば調べることができます。
なお、旧土地台帳の写しの交付手数料は無料ですが、取得するためには、申請書に理由を記載する必要があります。
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